名古屋高等裁判所 昭和28年(う)446号 判決
原審は検察官が被告人に昭和二十七年九月十四日頃から同年十一月二十三日頃までの間十三回に亘る名古屋市港区所在住友金属工業株式会社伸銅所内銅集積場(若しくは材料置場)に於ての銅板、古銅線砲金屑等の窃盗の併合罪ありとして起訴したところのものを右の日時場所に於ける単一包括的の窃盗一罪と認定したもので原審挙示の証拠によれば被告人の右の各行為は極めて近接した日時の間に殆ど同一の手口で同一の場所から古銅線等の非鉄金属屑を窃取して来たもので単一犯意の遂行として為された単純一罪の窃盗と認められないこともないのであり原審のこの点の認定に違法不当の点はない。而して原審の認定が単純一罪の窃盗となる以上当初の起訴事実が冒頭掲記の如く窃盗の併合罪であつたとしても被害品目被害数量の相違は必ずしもそれのみを以て公訴事実の同一性を欠くとか又審判の請求を受けた事件に付て判決をせず若くは審判の請求を受けない事件に付て判決をしたことにはならない之を本件に付て見るに論旨主張の如く被害の量は起訴事実では古銅線計約四十九貫砲金屑計約五貫三百匁銅板約五貫であり原審認定では古銅線計約五十貫砲金屑計十五貫余となつて居るが右原審認定の砲金屑計十五貫余は起訴事実中の砲金屑と銅板を併せ包括的に表示したものであること明白である又古銅線に於て起訴事実と原判決認定との間にも一貫匁の相違がある如くであるが起訴事実も原審認定も其被害数量は何れも概略の数字で殊更之をとりあげて彼此言うに足りないものである。被告人も原審公判廷に於て起訴事実に対する認否として起訴事実を総て認めたゞ銅板以外に付ては日時数量ははつきりしないが大体其通りであると思うと述べている従つて本件に審判の請求を受けた事件に付て判決せず又は審判の請求を受けない事件に付て判決した違法はない。